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巡る季節の風の色…          あなたと風を見つけてみたい     誰が風を見たでしょう         わたしもあなたも見やしない      けれど木の葉を震わせて風は通り抜けていく
by kikyou-h
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おばあちゃんの鍾乳洞
「奥多摩こころの旅」を始めたわたしにとって、日原は特別の場所になった。
ここにくると、何故か30年ぐらい時間を遡ってしまったような気持ちになる。
もし、タイムマシンがあるとするなら、それは心の時間旅行なのかも知れないと思う。

昨夜は、かなりの冷え込みだった。明日は、家族がそれぞれ出かけるので早めに家事を済ませて、わたしも「こころの旅」に出かけよう…そう思ってあれこれやっていたら、寝るのが遅くなって、相変わらず夜更かしをしてしまった(/_;)
夜半に目覚めると、ゴォー、ゴォー、ヒュー、ヒューと空をゆく風のうなり声が響いていた。
じっと聞いていると、空の上を大男が歩いていくような想像をした。
子供の頃、夜半の風音をそんなふうに思ったことを思い出した。大人になって、こういう音を虎落笛(もがりぶえ)と呼ぶことを知ったのだけれど…

2月4日、今日は立春、けれど、寒波で東京も氷点下の厳しい冷え込みの朝を迎えた。
どうしようかな?と思ったけどベランダで洗濯物を干していたら太陽が燦々と降り注いで意外と暖かい、家の中に居るより外に出たほうが暖かいみたい。これなら大丈夫そう。
あったかくモコモコに着こんでホッカイロをもって、ニット帽にマフラー、手袋…
わたしは完全防寒で家を出た。

日原に足を運び始めてこれで4度目だろうか?ここの山は石灰岩でできている。
低山ながら杉や檜の茂る山肌に、ゴツゴツとした露岩や、天をつくような尖った岩峰がたくさん見られる。石灰採掘のため階段状に切り崩された山や、まるで鉱山の町のような建物も不思議な雰囲気だし、石灰岩を運ぶトロッコ列車も、一昔前の風情だった。
それに日原の山には、たくさんの鍾乳洞があって、まだ、発見されずに眠っているものも数限りないのだそうだ。幻の洞窟や地底湖、考えただけでもわくわくするような、冒険と探検の香りがする(笑)

         日原鍾乳洞の上に聳える天を突くような梵天岩

その代表的なものが、日原川の支流を遡った日原集落の奥にある、日原鍾乳洞だ。
横穴式のこの鍾乳洞は、関東随一の広さだと言われ、洞内には、大小さまざまな鍾乳石や石筍が林立している。上から伸びる鍾乳石は3センチ成長するのに200年、下から伸びていく石筍は400年の歳月を要するのだと言う、気の遠くなるような年月を経て、鍾乳洞は今も成長しつづけている。冬枯れのこの時季は訪れる人もなく、入場券売り場のおばちゃんも所在なげにしていた。


洞内は夏冬通して11℃の一定した温度なのだと言う、入り口辺りは外から吹き込む風で寒かったが、奥へと入っていくと暖かく感じるようになる。裸電球や蛍光灯があちこちに灯り、縦横無尽に広がる洞窟の内部を照らしていた。

迷うことがないように、ちゃんと道順を示した看板があるが、シーンと静まり返った洞内は、立ち入り禁止の洞窟もあったりして迷いそう…。

何回も曲がりくねったり、上に登ったりしているうちに自分のいる場所は完全に判らなくなっている(・・;)
そのうち、メインの大きな広間に出た。天井は高く、大きな鍾乳石や石筍が林立している不思議な空間だった。なんとなく、キャスパーぼうやがいそう…そんなことを考えていたら、家に帰って撮った写真の整理をしていたら、白い奇妙な煙が映っている写真があって、背筋がゾク!即、削除した(笑)
そろそろ鍾乳洞の出口付近かなと思う辺りで、軽やかな音色に足を止めた。「水琴窟?」
ほの暗く静かな鍾乳洞の中に、ゆりかごの中で眠っていたような空気が、緩やかに緩やかに流れ出す。ささやくような、つぶやくような、なんともいえないような音色が微かに反響していく。
鉄琴のように美しい調べ…綺麗だった。


こんな空間を独り占めなんて…凄い!今日は貸し切り状態だった。
外からの冷たい風がどこらともなく流れ込んできてやがて明るい陽射しに包まれた。
あちこち歩き回って、30分ほどでようやく出口に辿り付いたのだった。


今日の目的は、もう一つある…それは日原の鍾乳洞まで来る途中にある大増鍾乳洞だった。
ネットで調べてみたら個人の鍾乳洞で民宿の主人が裏山を掘っていて偶然見つけ、自力で掘り起こした鍾乳洞なのだそうだ。小さいながらも珍しい白い鍾乳石が見れるのだという。
宿のおばあちゃんが案内してくれると書いてあった。来る時、バスの中から看板を見つけて場所は分かっていた。

民宿の坂道を上がろうとしたら、民宿のおばあちゃんと目が合った。
『ちょっと待ててくださいよ。いま、電気をつけますから…』そういい残しておばあちゃんは家の中に入っていってしまったかと思ったら、坂の上から呼んでいた。
登っていくと裏庭に立てられた小さな小屋に入っていく。
おばあちゃんは、いきなり岩の塊を手渡す。
『この岩を、たたいてごらん。鐘の音がするでしょう?これがいい鍾乳石の証なんだよ。中身が空洞だから音がするんじゃなくて、岩自体が音を出しているんだよ。もってご覧重いから』
ほんと、さっき日原の鍾乳洞で聞いてきた、あの水琴窟の音色と同じ!何だか感激!

『これが、白い鍾乳石だよ。触っていいよ。中のは触れないからここで触っていってね。』
真っ白い鍾乳石は触るとひんやり冷たくて、とても滑らかですべすべしていた。

次に、おばあちゃんは、『ここなんですよ』といいながら、床下収納庫の蓋を開けるように、
鍵を外して緑色の金網を張った木の蓋を持ち上げた。そこにはポッカリと穴が開いていて、横穴が続いていた。
「へぇ~!凄いですねぇ」わたしは、びっくりしてしまった。何だか秘密の入り口みたい…
『前はね、こんな蓋しなかったんだけどもさ、夜中に入って悪さをする人がいて、鍵を掛けるようになったんだよ』と、おばあちゃんは早口でしゃべる。『狭いから気をつけてね…』

中は、人一人が通れる位で本当に狭かったが、それだけ間近で鍾乳石を見ることが出来た。
『これが、洞窟珊瑚というのよ。』おばあちゃんは、ペンライトで照らす。本当に岩にへばりついた珊瑚のような形で、石灰岩が成長していた。

『これは断層だよ。昔はこの辺も海の底だったかも知れないんだって、長い間かかって、水が岩を浸食して、その水が引いた後に洞窟ができたんだってさ』
『ほら、これを見て、石灰岩を溶かした地下水が、岩を伝わって結晶して出来た帯状の鍾乳石なんだって。ここのは、純度が高いからこんなに真っ白なのよ』
『これを見て、逆万里って言った人がいるよ。それと、オーロラみたいだって言った人もいたよ。』
確かに、そう見える。透き通るように白い鍾乳石の帯は、暗い洞窟の中を巡っていた。
「そう、表現した人凄いなぁ。本当にそう見えますよ。綺麗!」

『見て見て、ここ、岩がキラキラ光ってるでしょう。これは、石灰岩の結晶が光ってるんだってさ。それを知らないうちのお父さんが、光る岩があるっていってたのよ~』
おばあちゃんは、わたしに、ペンライトを貸してくれた。本当に夜空に輝く星のように、岩がキラキラ輝いていた。まるで呼吸をするように岩が囁いているような気がした。
わたしはふと、大地に抱かれ、その声を聞いているようなそんな気がした。
なんて、綺麗なんだろう。すぐ目の前でこんな光景が見れることが凄いことだと思った。

おばあちゃんは巧みに狭い洞窟をすり抜けながら、わたしが頭をぶつけないようにと気づかってくれた。そして、7年前に癌で亡くなったご主人がここを見つけたいきさつを話してくれる。
『お父さんは、林業をやっていてさ。この辺の山のことはよーく知ってたのさ。この辺りにある鍾乳洞の場所も、みんな知ってたよ。いっぱいあるんだよ』

『この鍾乳洞は裏庭を掘っていて見つけてさ。休みの度に、土を運び出して、コツコツとひとりで掘り起こしたのよ。時々、大学の先生とか見学に来て、とっても貴重だよって言うのよ。
市に、申請を出せば、電気代ぐらい出るからもったいないから、申請しろって言うんだけど。
お父さんは、役場の嫌いな男だったから、このままでいいって、言ってるのよ』

おばあちゃんのトークは冴え渡り、いろんな思い出話など聞かせてくれた。
最後に、天井から何本も伸びた珍しい「鍾乳管(ストロー)」を見せてもらった。

  鍾乳管(ストロー)…“おきらくごきらくCAVING” さんより転記させていただきました。 
洞天井が平らだと、天井の細い岩の割れ目からしみ出る水は、水滴となってしばらくの間 同じ場所に留まります。その間に、水滴の表面から炭酸ガスを放出して表面に薄い炭酸カルシウムの膜ができます。水滴が大きくなると水はその膜を破って下に落ちますが、残った炭酸カルシウムの膜は、天井に付着し水滴と同じ直径の輪を作ります。一回の量は微量ですが、何万回,何十万回と繰り返すうちにだんだんと長さを増し、管(ストロー)状に伸長していきます。天井から垂下しているつらら石も、このようにして作られた肉厚0.3~1.0mm,内径0.4~0.7cmの鍾乳管が元になっているので、中心部に穴が空いています。

とても小さな鍾乳洞だったけれど、今も活動を続けている生きた鍾乳洞を見学できて良かったと思った。おばあちゃんのトークも楽しかったし・・・
何より、今日の収穫は、純度の高い鍾乳石が放つ、結晶の輝きだった。
そして、滴り落ちる地下水が作り出す、水琴窟のあの音色だ。
鍾乳石自体が、あの音色を作っていることも凄く不思議だった。
そして、台風などの大雨の後は、日原の鍾乳洞の中は傘をささなければならないほどの地下水の浸出があるのだと知ったこと。洞窟の中にも雨が降るのだ。

今日のこころの旅は、大満足だった。午後1時半、吹きすさぶ海鳴りのような風の中、わたしは帰路に着いた。枯れ葉が谷から空へと舞い上がっていた。
巨樹めぐりに続き、鍾乳洞めぐりなんてのもいいなぁ・・・なんて思いながら。
by kikyou-h | 2006-02-04 16:06 | Nature/自然
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